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黒島ひなのマーケティング【現代マーケティングの成功法則】日清・コカコーラ・ハウス食品に学ぶ「顧客起点」のブランド&データ戦略黒島ひなのマーケティング

現代のマーケティング環境は、テクノロジーの進化やプライバシー規制の強化により、激しい変化の真っ只中にあります。

「これまでのやり方が通用しなくなった」と感じるマーケターも多いのではないでしょうか。しかし、時代がどう変わろうとも、市場で勝ち続ける企業には共通点があります。それは「徹底的な顧客理解」と「愚直な仮説検証」です。

今回は、日清食品やハウス食品、コカ・コーラなどの具体的な事例を交えながら、これからの時代を生き抜くためのマーケティング戦略を4つの視点で紐解きます。

1. ヒットを生み出す「仮説検証」と徹底的なリサーチ

成功している企業は、勘や経験だけに頼らず、仮説を立てた定量・定性調査を驚くほど愚直に行っています。

◆ 日清食品「カレーメシ」の逆転劇

2014年に登場した「カレーメシ」。当時は「手軽なカレー=レトルト(白米は別用意)」が当たり前だったため、「水を入れてレンジでチンするだけでカレーライスになる」というコンセプトには、社内外から強い疑いの目が向けられていました。

しかし、実際に味覚調査を行うと評判はすこぶる良好。そこから「黄色い米のぬいぐるみ」が暴れ回る奇天烈なCMで一気に認知を拡大し、2022年度にはシリーズ売上100億円を突破する大ヒット商品へと成長しました。

◆ ハウス食品「バーモントカレー シェフズアレンジ」の狙い撃ち

定番のバーモントカレーは安定しているものの、実は売上が年々減少傾向にありました。そこでハウス食品は徹底的なリサーチを実施。目をつけたのは「夫婦共働きで子供のいない若年夫婦世代」でした。

従来の「調理に40分かかるカレールー」から「10分でできるペースト」へと形状を変更。ターゲットのライフスタイルに合わせた開発により、新たな市場を開拓したのです。

💡 ここがポイント

収益を伸ばすアプローチは以下の5つに分類されます。成功企業は、自社が今どこを狙うべきかの仮説を立て、調査を怠りません。

  1. ロイヤルユーザーからの収益を伸ばす
  2. 通常のユーザーをロイヤルユーザー化する
  3. 自社プロダクトを認知している「潜在顧客」を新規顧客化する
  4. 自社プロダクトを認知していない「潜在顧客」に認知を広げ、一気に新規顧客化する
  5. 離反・休眠状態にあるユーザーを呼び戻す

2. Cookie規制時代を生き抜く「データ活用」の新常識

マーケティングのインフラにも巨大な変化が起きています。GoogleによるサードパーティCookieの受け入れ停止に伴い、従来の「ユーザーのブラウザ行動を追跡してピンポイントで狙うリターゲティング広告」は事実上禁止となりました。

これからは、Apple、Google、Microsoft、Meta、LINE/Yahooといったメガプラットフォーマーが持つ「ファーストパーティーデータ」や、ユーザーが自発的に提供する「ゼロパーティーデータ」の時代です。

  • コンテキストマッチングの台頭個人データを追跡できない代わりに、AIがウェブサイトの内容(記事文脈)を分析し、その内容に最も適した広告をオークション形式で貼り付ける手法が主流になりつつあります。
  • ゼロパーティーデータの重要性ユーザー自身が「これを知ってほしい」と意図的に企業へ提供する情報です。例えば「配偶者のいないシングルで年収1,000万円以上(全体でわずか0.7%の層)」といった超具体的なターゲットにも、ユーザーの同意があれば的確にアプローチが可能になります。

3. アプリマーケティングの進化:単なる会員証から「CX(顧客体験)の変革」へ

企業のデジタル接点として欠かせない「アプリ」ですが、その役割は第1フェーズから第3フェーズへと進化しています。

フェーズ主な特徴・役割具体例
第1フェーズ商品カタログの電子化、ブランドを冠したミニゲームなど。初期の企業アプリ
第2フェーズ会員証のデジタル化。実店舗の購買データを顧客IDと紐づけて収集。無印良品など
第3フェーズアプリを購買やサービス利用などのCX(顧客体験)に組み込み、価値を大幅に増幅。コカ・コーラ(Coke ON)など

◆ 日本コカ・コーラ「Coke ON」の衝撃

自動販売機と連動した「Coke ON」は、自販機のCXをガラリと変えました。「ポイントを貯めれば1本無料」「歩くだけでポイントが貯まるスタンプ」「月3,300円で1日2本まで交換できるサブスク」「お釣りを電子マネーで受け取る機能」などを実装。これにより、コカ・コーラは自社独自の決済データを含む莫大な顧客データを獲得することに成功しました。

◆ 「顧客の痛み」を解決するアプリ事例

  • クラシコム(北欧雑貨EC):SNSなどに分散していたコンテンツをアプリに集中させ、CXを向上させた結果、売上の65%がアプリ経由に。
  • 仏壇のはせがわ:接客の中で「供養の仕方がわからない」という声が多いことに着目。アプリで「故人の命日」を登録してもらい、法事の時期をプッシュ通知でリマインドする機能を開発。ダウンロード数23万人、会員21万人を突破し、アプリ経由の店舗売上は年間6億円を超えています。

4. ブランドは変えるべきか、残すべきか?

多くのマーケターが頭を悩ませるのが「ブランドのリブランディング(変更)」です。ここで大前提となるのは、「ブランドというものは企業のものではなく、顧客の頭の中にあるもの」だということ。ネーミングやロゴ、パッケージは、顧客の頭の中にあるブランドイメージを連想しやすくする「手段(識別記号)」に過ぎません。

◆ パッケージ変更の成功と失敗

  • ファンケルの苦い経験象徴的だった「青いボトル」をスタイリッシュにする目的で「白」に変えたところ、店頭で顧客が青い瓶を探し出せず、見失ってしまい売上不振に陥りました。
  • ローソンのPB(プライベートブランド)デザイン炎上とリカバリー2020年、PBのデザインを一斉に統一したところ、「棚に並ぶとどれがどれだか分からない」とSNSで炎上。既存顧客の離脱を危惧したローソンは猛烈なスピードでパッケージを作り直しました。結果として新規顧客と既存顧客のバランスが取れ、男女比がほぼ半々となり売上も順調に伸びました。

◆ 変えるべきもの、残すべきもの

ロングセラーを抱える日清食品は、定番の「カップヌードル」の味は変えずにパッケージや素材を時代に合わせて微修正します。一方で、「ラ王」のように名前は浸透していても「味が時代に合わない」と判断すれば、レトルト生麺からノンフライ麺へという「味の大改革」に踏み切ります。

💡 ブランド管理の手法「5segs(ファイブセグズ)」

顧客を「未認知」「認知・未購買」「一般」「ロイヤル」「離反」の5つに分類し、それぞれの課題に応じた施策を打ちます。

  • 一般 ➔ ロイヤル:リピートされない原因を探り、競合に負けない「独自の便益(知覚価値)」を伝える。
  • 離反 ➔ 復帰:単に存在を忘れられている(想起率の低下)ケースが多いため、再び思い出してもらうきっかけを作る。

広告を作る側は安易に「ロゴやパッケージを変えよう」と考えがちですが、不二家が「古臭くて子供っぽい」という課題を明確にした上でリブランディングに成功したように、ユーザー像・商品カテゴリ・人格イメージを徹底的に見極める必要があります。

まとめ:これからの主戦場は「リテールメディア」へ

現在、セブン-イレブンをはじめとする小売業が持つ広告媒体「リテールメディア」は、わずか2年で売上が10倍に急成長しています。そのうち85%はメーカーの販促費であり、購買データと直結したこの領域は、今後のマーケティングの主戦場となるでしょう。

手法やテクノロジーがどれだけ進化しても、私たちが向き合うべきは常に「顧客の頭の中」です。データ規制を恐れるのではなく、顧客に寄り添ったCXを提供し、信頼されるブランドを愚直に作っていくことこそが、最大の戦略と言えます。

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